≪第9回(平成27年度)テーマ≫
恋
≪第9回(平成27年度)テーマ≫
恋
二人から 四人になってまたふたり 新婚だねと クスッと笑う
ゆずママ
子供が巣立って、二人になった解放感。「クスッと笑う」の若々しさ。これからが楽しみですね。(田中)
仲のよい夫婦の姿と時のながれに人生の哀感があります。(水野)
帰り道 あなたの押してる 自転車に 隣をとられ 小さな嫉妬
スギハラ
一首の背後に「あなたの隣にいるのは、私だけよ」という、いじらしい気持ちが出ています。(田中)
自転車の擬人化と小さな嫉妬をする可愛らしさに巧みを感じます。(水野)
手をつなぎ 杖の代わりと 妻照れる どこまで続く 恋の細道
てんじょう
スキンシップは、恋の第一歩。でも熟年夫婦だから、照れて理由をつけているのですね。(田中)
お互いに支え合っている老夫婦。「杖の代わり」と「細道」が絶妙。(水野)
繋いだ手 また会う日まで おあずけで 空いた右手を スマホで埋める
あやの
恋人と手をつないでいる時の幸せ。でも人の温もりのないスマホでは、埋められませんよね。(田中)
スマホの擬人化。印象的な「おあずけ」という言葉。情況設定の上手さが光ります。(水野)
「すき、きらい」たんぽぽの花びら空に飛ばせば春風に舞う黄色のハート
ふーみん
たんぽぽの花占い。春風、黄色のハート・・・・・初々しく視覚的に美しい。(田中)
素直な気持ちを素直に表現した恋うらない。「黄色のハート」が効果的。(水野)
門限を 守る彼氏に 父が惚れ
明太子
「父が惚れ」で決まった一首。優等生の彼の姿を想像します。(田中)
律儀な彼氏。父から勝ちとった信頼。面白い切り口です。(水野)
『 好きですと 覚えたインコを プレゼント 』
九(いちじく)
プレゼントするまでに時間がかかりましたね。インコに覚えさせたのですから。(田中)
おちゃめな作者の作戦。ユーモアがあります。(水野)
寒いねと二人の距離を近付ける缶のコーヒー夜の公園
田中絵美
俵万智を思わせる、かろやかさ。ここから二人のドラマが始まりそう。(田中)
「夜の公園」という場面設定。「缶のコーヒー」という小道具。二人の情況が目に浮かびます。(水野)
ずぶ濡れの ボクを待ってた 赤い傘
良馬
待っていたのは彼女です。が、「赤い傘」と表現することで、視覚的な句になりました。(田中)
モノクロの世界に鮮やかな赤の色彩は恋の予感。ドラマのような一場面。(水野)
青空とおまえ背にして疾走(はし)る夏バイクはめざす岬のチャペル
城門るゐ
ドラマの1シーンのよう。二人だけの神聖な約束を交わすのでしょうか。頼もしい男性像がたちあがります。(田中)
「疾走」という言葉に熱い気持ちがあふれて、舞台はまさに整った感じです。(水野)
小説の ラストシーンに 挟み込む 栞に書いた 愛の告白
酒井具視
小説のラストシーンと、栞に書いた愛の告白が相まって、恋は成就しそうですね。(田中)
栞に愛の告白を書く純情な作者。挟み込む場所は小説のラストシーン。ドキドキ感が伝わります。(水野)
調味料みたいな恋の『さしすせそ』 咲いて、幸せ、好きだから、背伸びしないで、そばにいて。
琴音翼
ウイットにとんだ一首。「さしすせそ」の具体が何気なく、「そばにいて」で決まりましたね。(田中)
恋の『さしすせそ』が自由に表現されていて、少し長い散文も気になりません。成功した例です。(水野)
「ありがとう」 その一言が 聞きたくて 居眠り横目に 黒板写す
のん
「ありがとう」何といい言葉でしょう。恋のはじまる予感。(田中)
なんと優しく慎ましい恋でしょう。好きだから許してしまう。恋は盲目(水野)
軽率に訊けぬ戦時の祖母の恋
けい
部屋の灯りが やけに暗く感じる 妻の留守
清詩薫
『 彼の靴 わたしの隣へ 並べ替え 』
九(いちじく)
「こっちおいで」 そのひと言が 聞きたくて わざと離れる 1.5メートル
まいぽん
この耳は キラキラ光る ピアスより 想いささやく その声が好き
ベンジャミン
少しでも いい香りする ボディソープ 探し求めて 行くドラッグストア
角森 玲子
見かけても 素知らぬふりで すれ違い 後でこっそり 振り向く二人
シエル
辛い時 実感するよ すぐ治る 君のメールの 魔法は確か
さきたや
「おやすみ」の 4文字でさえ 宝物 ぼんやり光る 液晶画面 愛しく見つめ 眠りにつく
はるか
たくさんの話したいことあったのに抱きしめられて真っ白になる 今は言葉はいらない
がづごん
令和相聞歌の選考委員の先生を紹介させていただきます。(50音順 敬称略)