≪第6回(平成24年度)テーマ≫
恋
≪第6回(平成24年度)テーマ≫
恋
オリオンの話をやめてキスをして
待てない
彼女よりももっともっとミる情感を彼は、抑え抑えオリオンの恋物語を熱っぽく語る。何より早く抱擁したいのは彼の筈である。平易な措辞の中に爆発しそうな一刻が見えて実感が添う。(木村)
男のロマンは恋人に星座を説明すること、女性のロマンは現実的です。(笹本)
ロマンティックな気分にひたっている、照れ屋の男性。そんな男性にじれて、キスをせがむ積極的な女性。ここから二人の「オリオン物語」が始まるのでしょう。(田中)
指先で 画面をなぞる 恋心
酒井具視
ういういしい恋心がストレートに表出されており、現代の愛の表現として納得出来る。なぞる指先が僅かに震えているかも。(木村)
メールの時代の恋をみごとに歌いあげました。(笹本)
好きな人からのメールを指先でなぞる初々しさ。スキンシップ願望でしょうか。(田中)
「好きです」の メールを今夜 抱いて寝る
良馬
ついに貰った「好きです」のシグナル。はり裂けんばかりの胸に深く深く抱きしめる。寒さなど微塵も感じない一と夜。(木村)
一生に一度のコトバかも知れませんね。大切にして下さい。(笹本)
「好きです」のメールは、恋人そのもの。だから抱いて寝るのですね。(田中)
天使たち お願いだから 味方して
マイマイ
焦る恋心を全うするには自分しかない。絶対に今宵告白しよう。恋の天使など居る筈が無いと。この詩は斯様に解して当然である。(木村)
私ひとりではどうにもならない片恋。だからエンジェルたちも味方してですね。(笹本)
恋の勝者となるためには、応援団も必要。こんなに可愛くお願いされると、天使もきっと味方してくれるでしょう。(田中)
一坪の 庭に季節を 眺めつつ 妻の髪切る 爪も切る
神馬せつを
妻を介護する微笑ましい一刻を切り取っており、「季節を眺めつつ」の措辞に相思相愛の幾年月が見えて心あたたまる一首。(木村)
つつましい生活ですが、妻の髪を切ってあげ爪も切ってあげる幸福感。(笹本)
情景の見えるような作。「一坪の庭に季節を眺めつつ」で、作品世界が大きくなりました。(田中)
さりげなく 鞄を右手に 持ちかえる 君に握って ほしい左手
花 風香
一読やや作為的構成の一首だが、近頃の若者は筆者等には到底及ばない素晴らしい恋を育む知恵を持っているのだ。(木村)
作者は高校生でしょうか。カバンを持ちかえたところが愛らしいです。(笹本)
「さりげなく」に万感の思いが込められているようです。(田中)
強風に洗濯物がはためいてあなたのシャツに抱きしめられる
ゆう
はためき乾く彼の洗濯物を、くるりと首に或は胸辺に巻き付けてみる。まさに、愛する彼の腕(かいな)の力強さに恍惚とする一刻。(木村)
新婚の女性でしょうか。風邪で彼のシャツにまとわれる幸福感です。(笹本)
「あなたのシャツに抱きしめられる」は、作者の発見。(田中)
寂しさは たしかに君がいた証 あの窓際の二番目の席
徳永侑子
報いられない愛もあれば、それを告げることの出来ない愛もあろう。思春期の淡くも切ない一駒であり、二番目の席に実感がこもる。(木村)
回想の恋を上手に歌いました。「窓際」「二番目」がリアルでよいです。(笹本)
具体的に「窓際の二番目の席」と詠うことで、より寂しさが強調されました。(田中)
逢えぬなら せめて真白き雪となり あなたの肩に降りていきたい
小池真
合わせ物は離れ物であり、どんなに焦っても実らぬ恋もある。一念一途な情念が幻想的に余すなく描かれている。(木村)
雪のイメージが純粋さを示していて、よいですね。(笹本)
たちまちに解ける雪でもいい、あなたの肩に降りていきたい・・・せつない恋心。(田中)
君は月 僕は太陽 そして今 ひとつになりぬ 金環日食
瞑王院風雅
金環日食のごとくついに恋が実り、一心同体となった二人。金環日食は日と月の性の交わりと信じる国もあり、モチーフに鮮度あり。(木村)
金環日食となりました。ふたりの心は無心の境地ですね。(笹本)
ひとつになりたい願望を、金環日食にむすびつけた、歌柄の大きい作品。(田中)
夕焼けは暴いてしまうなにもかも 僕の気持ちも君の気持ちも
えむ
一日が終わり、押し迫った夕焼けの色に二人の心の縛りがついにゆるむ。妙味ある一首である。(木村)
赤い夕日にふたりの顔が輝いているようです。(笹本)
真っ赤に焼けた夕焼けは、人を敬虔な気持ちにします。(田中)
入院した妻を見舞う。まるで付き合い始めた頃のように、照れながら「やあ」と言う。いつものように「お帰り」と妻が言う。我が家のような417号室の夕暮れ。
鼓吟
幸福な結婚は二人の間に決して退屈をしない会話があると言うことであろう。何と温もりのこもる「417」という数字であろうか。(木村)
病院の夕焼けの四階ですね。「やあ」と「お帰り」が効果的です。(笹本)
病室がスイートホームのよう。「やあ」「お帰り」が上手く入っています。(田中)
雨宿り 隣の君が 近すぎて 水たまりより 揺れてる心
足立有希
雨宿りにふと遭遇する二人。勿論相手は若いおんなである。それをわかっている男の一刻の心中心情を巧まず水の揺れが象徴している。(木村)
水たまりより揺れてる心がとてもよい表現でした。(笹本)
もっと近くにいたいと思い、近すぎると揺れる心。恋とはそういうものでしょう。(田中)
このひとと座れば春のまん中に
杉本浩平
この人と座るのは向き合いではなく、やはり横であろう。彼の横に座れば、何もかも満たしてくれる春爛漫の一刻なのである。(木村)
その人と座ればがらりとまわりの雰囲気が変わったのですね。(笹本)
「春の真ん中」は、言い得て妙。ほっこりと、心あたたまる人なのでしょうね。(田中)
天の川 遠く離れて 暮らせども 心 浮き立つ 瀬戸の大橋
のんの
突然の 雨が縮めた 肩ふたつ
酒井具視
プロポーズ ここでするんだ 恋の聖地
田中克則
鐘の音(ね)が 桜と共に 風に乗る
まゆ
もう寝るとメールしたのに返事待ち
プレ
令和相聞歌の選考委員の先生を紹介させていただきます。(50音順 敬称略)