≪第5回(平成23年度)テーマ≫
恋
≪第5回(平成23年度)テーマ≫
恋
母さんは 週に2回の デートと言う 花束持って お墓まで
市來央子
偕老同穴が理想の夫婦像であろうが、今生更に、生かされることになった母さんの尽きぬ愛慕。あたたかい一首。(木村)
お墓参りは過去のデートの継続ですね。(笹本)
デート、花束という言葉から、墓参りのしめっぽさがなく、うきうきと出かける母親像がうかびます。(田中)
あなたがいてくれる それだけで幸せ そう思えた3月11日
田中克則
大津波ですべてが流されたとしても、あなたが居ます。(笹本)
しあわせの原点を単純、明快に伝えている作品。3月11日はしあわせの原点を再認識した日。(田中)
蒼の色 闇夜に見える海ほたる 貴方と歩く白い砂浜
かおり
綺羅光る海蛍は二人の恋の炎。白い砂浜はチャペルのバージンロードのようにつづく。まさに夢のような一と夜。(木村)
恋の町宇多津にぴったりの短歌となりました。(笹本)
海ほたるの光る砂浜を歩くふたり。さあ、恋の舞台の幕はあがりましたよ。(田中)
片思い きっと天使が さぼってる
みゃーも
片思いとはいえ、焦がれるようなこの気持ちをわかってくれないのは、天使がサボっているのだと把握した機転、大いに共鳴(木村)
ユーモア溢れています。さあ、どうやって神様の眼をさまさせましょうか。(笹本)
「片思い」を、天使がさぼっているという発想。視点を変えるのも、生きる知恵。キュートで明るい作者を想像します。(田中)
ケータイに 恋の神さま 降りてきた
氷夏
メールでの愛の告白を受け入れてくれたのは、携帯にきっと恋の神様が宿っているからだと思わずにはいられない夢心地。(木村)
念力が通じて、いよいよ恋の神さまのお出ましですね。(笹本)
恋人からのメールを「恋の神様」ととらえたところが、この歌のみつけどころ。(田中)
夏祭り。露店で買った林檎飴。君の何気ない一言「一口ちょうだい」。ただそれだけなのに私の頬は林檎飴
玖瑠葉
馴初めの頃、「一口ちょうだい」の思い切った一語によって急接近する二人。「私の頬は林檎飴」のフレーズなかなか機転が効いている。(木村)
おいしそうなリンゴ飴です。そのリンゴ飴のように甘い恋ですね。(笹本)
「一口ちょうだい」に、何を想像したのでしょう。初々しい作。(田中)
玄関の 音で火を点け 彼を待つ 煮詰まりすぎた クリームシチュー
香月
恋人を待つ間は誰しも、心搏百を越すほどの緊張感となる。「煮詰まり過ぎたクリームシチュー」に、それを言い尽くしている。(木村)
彼への愛情も煮詰まってきていますね。(笹本)
「待つ」よろこびを、クリームシチューに語らせた作。(田中)
あなたが空を飛びたいのなら、私はあなたの翼になりたい。 澄み渡るこの大空を、あなたと一緒にどこまでも飛んでいきたい。
りのんぱ
唐の詩人白居易の歌に比翼連理と言う言葉があるが、この歌もまた、相手の一途な心に和すべく極言の愛を表白して実感が添う。(木村)
一心同体、さあ幸福という目標にむかって飛翔して下さい。(笹本)
愛する人とひとつになりたいという気持ちを、詩的にとらえた、透明感のある作品。(田中)
大学で君の自転車をみつけると 僕の心臓が静かに騒ぎだす
たっくん
恋人の自転車を見つけた時のどうしょうもなく高まる鼓動。まさに恋は神聖そのものであり、誰しも経験がありそうで実感がこもる。(木村)
これはどうしょうもない、止められない。初恋でしょうか。(笹本)
君の自転車を見付けただけで、胸がドキドキする。まさに「恋の予感」ですね。(田中)
恋器(こいうつわ) SからLに変えたけど 入り切らない 君への想い
よ〜 そろ〜
押えようにも押えきれず、只管に募るばかりの恋心。斯かる心中の増幅を現代風に「SからLに」と比喩した把握は痛快。(木村)
恋器が漢字、S、Lが英字、この対比にウイットがあります。(笹本)
恋器(こいうつわ)は、作者の造語でしょうか?面白い発想ですね。XLに変えても入りきらないでしょう。(田中)
改札で 時刻見る振り 君探す
太田 進
誰しも体験がありそうな一刻を掬いあげており、「時刻見る振り」にリアリティがあってよい。(木村)
さあ、見つかったでしょうか、心配です。(笹本)
早く逢いたい気持ちをさりげなく、「時計見る振り」で、カモフラージュ。(田中)
雨の匂い緑の匂い陽の匂い一番好きなあなたの匂い
えむ
雨、緑、陽、さあ彼は健康な男性ですね(笹本)
詩的で説得力のある歌。匂いをたたみかけるように使って「あなたの匂い」を導き出す、巧みな一首。(田中)
彼一途 恋にも欲しい 皆勤賞
一途な恋
女にとって恋愛は生涯の歴史と言われているが、真白面に真剣に彼を愛する彼女には是非皆勤賞を差しあげたい。俳諧味も添う佳句。(木村)
自然に皆勤賞になってしまいますね。恋は独走しますから。(笹本)
一途な恋は、きっと神様がご褒美を下さるでしょう。(田中)
夜行バス カーテン開けたら 君の町
よしたい
夜行バスで君に逢いに行く喜びがカーテンの薄ら明りに象徴され、共鳴の一句。(木村)
一瞬カーテン開けたら君の街、テレパシィですね。(笹本)
イメージのたつ愛唱性のある歌。君の街は、バラ色に輝いていたことでしょう。(田中)
手をつなぐ 2人の影は さくらんぼ
ひゅるりら
手をつなぐ二人の影はまさにさくらんぼのように見える。ナイーブな二人の愛がさくらんぼの季語に象徴されてあたたかい一句。(木村)
ふたりの頭の影が実に見えて、面白い発想ですね。(笹本)
手をつなぐ二人の影を、サクランボととらえたところが初々しい。恋の予感のさくらんぼですね。(田中)
ニヤケ顔 気づかれない様 すまし顔 あなたの前では ポーカーフェイス
あいりす
帰り道 ずっと家までついてくる あの三日月は きっとキミだね
朝山ひでこ
電話機を汗ばみにぎる左手に私の恋が振動している
岩城加奈子
君の声 まるで素敵な 音楽だ
マイマイ
携帯の カレの笑顔を 抱いて寝る
蒼い朱鷺
令和相聞歌の選考委員の先生を紹介させていただきます。(50音順 敬称略)